安倍首相が進める雇用改革は、「世界で一番労働者が働きづらい国」づくりを目指すものです。労働者なくして、企業もなし。結局、企業活動も停滞し、国内投資は減り、企業の国外移転を加速させます。
残業代も払わずに長時間労働を強制する企業、セクハラ・パワハラが蔓延する職場、経営者が気に入らないからと解雇する雇用主。日本は、ブラック企業、ブラックバイトが当たり前の社会になろうとしています。これが、もっと深刻になりかねません。
働きすぎで心身の健康をこわし、最悪の場合死に至る「カロウシ」の申請件数は年間2000件もあります。就職して1年も経たない青年労働者が、月100時間をこえる残業を強制され、自らいのちを絶つ事例さえ起きています。
今や低賃金・不安定雇用の非正規労働者は労働者の3人に一人、2000万に達しています。1年間働いても年収が200万円にも達しないワーキングプアも増え続け、1100万人を越えています。中央値の半分に満たない年間所得しか得られない貧困層が6人に一人、16.1%におよんでいます。日本は先進国第4位の貧困大国です。
貧困から人々を救うための社会保障も削られ、生きるためにはどんな仕事でもいとわず働かざるをえない状況がつくられています。それゆえ、いのちを削る働きかたを選ばざるを得ない労働者が増え続ける日本は「人間らしく働くルール」の後進国です。
安倍政権になって労働者の状態悪化はさらに進んでいます。雇用が増えたと安倍首相は言いますが、増えたのは非正規労働者ばかりで、正社員はむしろ減っています*1。労働者の賃金は、2015年6月までで24カ月も連続して実質賃金がマイナスとなり、ワークングプアも2年間で30万人も増えました。
*1 総務省「労働力調査」詳細集計より2013年1~3月と、2015年同期で比較すると正規雇用は16万人減り、非正規雇用が109万人増えている。
よくなったのは企業だけで、2013年度末には前年よりも42.8兆円も内部留保を積み増ししています。法人税をまけてもらい、円安効果で利益をあげても、企業は労働者を非正規におきかえ、賃金も抑制し、残業代未払いのただ働きを強制しながら、内部留保を積み増し続けているのです。
「人間らしく働くルール」が未整備な上、そのルールすら守られず、それによって企業が儲けをため込み続けている時に、安倍政権は、1日8時間労働や直接無期雇用という働くルールの「岩盤」を壊す「労働法制改悪法案」を、通常国会に提出しました。労働者の声を聞こうともせず、残業代を払いたくない企業や、労働を商品化する派遣会社の意向に忠実な政策を強行しようとしています。これも、安倍暴走政治の象徴的な改悪です。
「プロフェッショナル労働制」と名付けられた新たな労働時間制度は、何時間働くかは労働者まかせにし、企業は成果(目標)を示すだけという内容です。決められた時間だけ労働を提供すると言うルールをなくし「奴隷状態」に労働者をおく、歴史の歯車を逆転させる大改悪です。
労働者派遣法の大改悪では、「派遣就労は臨時・一時的な業務を原則とし、正社員化を進める」と説明しながら、それとは真逆のことをしようとしています。あらゆる業務で正社員から派遣労働者への切り替えをすすめ、生涯派遣という不安定な雇用から逃れられない労働者を多数生み出そうとする雇用破壊法案です。
さらには、使用者による違法・不当な解雇であっても、金で解決してしまおうとする「不当解雇の金銭解決制度」も検討されています。
雇用と働き方の根本を破壊する労働法制改悪は、ワーキングプアをさらに増やし、貧困をさらに深刻にすることは確実です。
ブラック企業を野放しにし、カロウシを促進し、正社員ゼロの社会に進む「道」、安倍雇用改革に、労働者の未来を託すことはできず、暴走をストップさせなければなりません。