安倍政権の下2014年12月10日に施行された特定秘密保護法は、安全保障や外交等の国家機密の漏洩を防ぐために作られましたが、日本国憲法で保障されている国民の自由と権利を著しく制約するものです。これは憲法によって権力を縛り、国民の自由を守ろうとする立憲主義に明確に反しており、この姿勢は、政権が押し進める改憲草案のヴィジョンとリンクするものです。
私たちは今回、特定秘密保護法に対し、1. 秘密指定の範囲が曖昧であること、2. 知る権利を制約すること、3. 適正評価制度がプライバシーの侵害にあたること、の三点から反対します。そして、日本国憲法の保障する自由と民主主義の理念に基づき、安倍政権にNOを突きつけます。
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秘密指定の範囲が曖昧であること
特定秘密の指定項目は四分野計55項目に分けられていますが、文中に多く組み込まれている「その他」という文言はその定義が非常に曖昧なものであり、行政の恣意的な判断によって拡大解釈されないとは言えません。更に、それを監視するための独立性の高いチェック機関は実質的に不在しており、秘密の指定・点検から処理まで、すべて内閣内の機関で行われ、立法府や司法府が直接介入できない状態になっています。
このような行政への権力の集中は、権力の暴走を防ぐために、近代憲法において不可欠の要素である権力分立・三権分立に反しているものと言えます。
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知る権利を制約すること
情報は国民の主体的な政治参加のために不可欠な資源ですが、秘密指定の範囲が必要以上に広げられることにより、国民の政治的判断能力は制約されてしまいます。更に、国民が自ら政治的判断を行うための情報に触れようと考えたとき、本法の刑罰規定によって政治参加そのものに対し萎縮してしまいかねないことが問題点として指摘できます。
例えば、原発に関する情報は安全保障に関する情報に該当する可能性があり、特定秘密に指定される可能性があります。そのため、原発事故が発生した場合、国民にフィードバックのための情報が公開されないだけではなく、事故の検証のための情報を得ようとすること自体が犯罪行為に該当する可能性があります。
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適正評価制度がプライバシーの侵害にあたること
本法で定められる適正評価制度は、家族構成、経済状況から飲酒の節度に関する事項までをも評価項目として含んでいます。これらの調査はプライバシーの侵害にあたることが多くの識者から指摘されています。また適正評価の対象には、公務員だけではなく非公務員も含まれます。例えば特定秘密を取り扱う可能性の高い原発作業員や軍事産業に関わる人も、適正評価の対象として含まれる可能性があります。
適正評価は任意で行われるため強制ではないとされていますが、対象者が適正評価を受けることを拒否した場合、解雇や処罰が行われないという保証はありません。これらのことから、プライバシーを侵害しかねない適正評価が、非公務員を含めた多くの人に半ば強制的に行われる恐れがあります。
このように、特定秘密保護法は行政の権力集中をもたらし、国民の知る権利やプライバシーを大きく侵害しかねない非常に危険な法律であると私たちは考えます。そして法の内容は勿論、それが成立するまでのプロセス(たとえば、68時間という非常に短い審議時間)さえ杜撰なものであることからも、この法律は私たちの生きる自由で民主的な日本社会を著しく傷つけるものであると判断することが出来ます。
政府は国際常識にかなう国家秘密を取り扱うためのルールが必要だと主張していましたが、秘密にしてはならないカテゴリーの明記、独立性の高いチェック機関の設置を求める「ツワネ原則」もまた国際常識としての一つの地位を築いていると言えます。そして、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義を基軸とする世界で最も先進的な憲法を持つ日本が参照すべき「常識」は、知る権利と安全保障の間の緊張関係をふまえつつ市民の自由の側に立つ「ツワネ原則」であると私たちは考えます。
私たちは日本国憲法で保障されている自由と民主主義の理念に基づき、特定秘密保護法に反対します。そして、このような法律を実現させ、今現在改憲に躍起になっている安倍政権に対抗します。